学術的にはさまざまな見方がありますが、当ブログではさまざまな物語に影響を与えている「ケルト」というものについてお話していきたいということもお伝えしました。
さて、今話と次のお話は、古代ローマやギリシアの人々がケルトをどのような民族として見ていたのか、ということについて触れたいと思います。(その1)ではケルトの戦士の勇猛な戦いぶりについてお話しします。
ケルトの戦士のすさまじい戦いぶり
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ユリウス・カエサル |
この戦記は紀元前58年から紀元前44年にかけてのローマとケルト人(ガリア人)の戦いを書いたものですが、ケルトの戦士のすさまじい戦いぶりや堅固な要塞、身分制度、風俗、ケルトの神々などについて、彼が観察したままが描かれています。
『ガリア戦記』に記されたケルトの戦士
ケルトの戦士が勇猛果敢だった理由について、カエサルは「死を恐れず、死後も魂は滅びないという信念をもっているからだ」と記しました。
またカエサルは、その信念は狡猾なドルイド僧たちが、人々に死を恐れさせないために教え込んだものだ、と結論しています。
「僧侶たちはまず霊魂が不滅で死後はこれからあれへと移ることを教えようとする。こうして死の恐怖は無視され、勇気が大いに鼓舞されると思っている」(『ガリア戦記』より)
もちろんこれは、術策を好む傾向の強いカエサルなのでこのような見方をしているわけですが、ケルトの文化や思想からすれば必ずしも彼のことばが正しいとは限りません。
しかし、そのすさまじい戦いぶりはローマ軍を震え上がらせるに十分だったようです。
ギリシア・ローマの歴史家が語るケルトの戦士
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ディオドロス |
「戦場で騎馬部族と出会うと、彼らは投槍を投げかけ、ついで、戦車から跳び降りて剣で打ちかかる。彼らの中には、鎧兜(よろいかぶと)を身につけず、裸に革帯を締めただけで敵の中に飛び込んでくるような命知らずな連中がいる」(『歴史文庫』より)
またディオドロスは、ケルト人の外見についてもおもしろい記述を残しています。
「ガラタイ人(ケルト人の別名)を見ると恐怖にかられた。……みな背が高く、皮膚は白く筋肉は盛り上がっている。髪の毛は金色だが、それは生まれつきであるだけでなく、人工的に着色するのだ。また髪を何度も石灰水で洗い、額から上へ冠のように持ちあげて、首筋まで垂らしている。特別な洗い方のために、馬のたてがみのように太く堅くなって、まるで森のサチュロスかパンの神のように見えるのだ。あごのヒゲを剃っている者もいるが、ヒゲを生やしている者もいる。貴族たちは頬だけ剃って、鼻の下にはヒゲをたくわえ伸びるままにしておくので、口をすっぽりおおっている。食べるときにはヒゲに食べ物がひっかかったり、飲みものは、まるで濾過機のようにヒゲを通っていく」
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ストラボン |
「ガリア人あるいはガラティア人(ケルトの別名)と呼ばれるこの民族全体が、軍神アレスに憑かれており、短気で闘争的である。……昂奮すると彼らは、いつであろうと、どこであろうと、どういう理由であろうと、自分たちの力と勇敢さ以外は何ものも頼りとすることなく、ただちに危険の中に飛び込んでゆくのだ」(『地誌』より)
なんともケルト人というのは、短気で命知らずで異様な外見だったことをほうふつさせる記述であふれています。このような怖ろしいげな戦士が襲い掛かってくるわけですから、ローマ軍が感じた恐怖もわからなくはありません。
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古代ローマ軍団 |
ケルトの勇猛な戦士たちも、ローマ軍の統制のとれた戦術の前に、くだけ散ってしまったのでした。
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さて、次回のお話では「ギリシア人やローマ人が見たケルト(その2)として、ケルト人の指導者にしてもっとも権威のあるドルイド僧と、ギリシア人やローマ人が想像したケルトの霊魂不滅思想について、お話ししたいと思います。
To be continue
●参考にした図書
『ケルトの神話―女神と英雄と妖精』井村君江著 ちくま文庫
最初の章でケルトを概観し、次の章からケルトの各神話について「天地創造神話のない神話」「ダーナ神族の神話」「アルスター神話」「フィアナ神話」に分類し、詳しく解説した好著です。
著者の井村氏は、このほかに多数の著書もありますが、W.B.イエイツが著した『ケルト妖精物語』『ケルトの薄明』の翻訳も手掛けられています。
『ケルト神話と中世騎士物語―「他界」への旅と冒険』田中仁彦著 中公新書
ケルトの神話の中でもケルト人が考える「他界」について、様々な神話をもとに解説しています。また、ケルトの神話が中世騎士物語に与えた影響についても著し、心理学的な考察にまで触れています。
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