前話をお話しした後に、またまた妄想が湧いてきました。えっ、この話って、もしかしてエリザベス女王の怒りを代弁したお話では? と思ったのです。
老齢を迎えた女王が我が身を振り返り、あまりに過酷だった人生に憤りを感じた。しかし、女王としてあからさまにその怒りを臣下や国民にぶつけるわけにはいかず、押し殺すしかない。その気持ちを汲み取ったシェイクスピアが、彼女の怒りを代弁してこのお話を書いた。そのことで女王の傷を完全に治すことはできずとも痛みを和らげることはできた。そう思ってしまったのです。
なぜか。
ハムレットの境遇はエリザベス女王の境遇にとてもよく似ていて、この物語はその苦しみの解消につながっているではないか、と思ったからです。
今話では、エリザベス女王の人生を振り返りながら『ハムレット』との関係を考察し、この物語が女王の怒りとその癒しについて語っているのではないか、ということを考えてみたいと思います。
エリザベスとメアリー、ハムレットとガートルード
いきなりどぎついことをおききしますが、みなさんは近親相姦についてどう思われますか?
このことばは忌まわしく不吉な雰囲気をまとっています。近親相姦で生まれた子は奇形児だったり特定の病気にかかりやすかったりする、いわゆる劣性遺伝を受け継ぐなどといわれたりします。
では医学がまだ未熟だったエリザベス朝の頃はどうだったでしょう。その頃でも古代から受け継いだ知恵で、血が濃くなると夫婦の子どもに奇形が生まれるということは分かっていたのではないかと思います。
加えてキリスト教会は、神の教える倫理に反する行為だとして近親相姦をタブーとし、親子きょうだい同士の結婚だけでなく、たとえば兄が死亡した後に弟がその妻をめとることも「近親相姦」だとしました。
ハムレットの苦悩
『ハムレット』においては、故ハムレット王の妻ガートルードは彼の弟のクローディアスと結婚しました。キリスト教の教えでは明らかに「近親相姦」です。
ハムレットの憂鬱は、肉欲に負けてクローディアスと近親相姦にあたる結婚をしてしまった母を腐っていると認識し、その子どもである自分も腐乱していると思わざるを得ない、というところからも来ています。
またハムレットはハムレット王の実子です。クローディアスに「わしの次は、ハムレットがデンマークの王だ」と横柄に許可してもらわなくても、ハムレットには十分にその資格があり、「なんでお前なんかに指名されなければならないのだ」と思っていたに違いないのです(注1)。
メアリーの復讐とエリザベスの立場
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メアリー1世 |
というのは、キャサリンはもともとヘンリー7世の長男アーサーと結婚していたのです。ところがアーサーが彼女と結婚してすぐに死去したため、ヘンリー7世はローマ教会の反対を押切って次男のヘンリー(後のヘンリー8世)と結婚させました。二人のあいだにできたのがメアリー。つまり彼女はキリスト教でいうところの「近親相姦」の子なのです。
そして、ヘンリー8世がキャサリンと離婚する際にその理由としたのが、兄の妻と結婚したこの結婚はタブーであり無効だということでした。しかしこの時はローマ教会の許可を得ることができず(注2)、憤慨したヘンリーがイングランド国教会を設立して自分が最高位につき、キャサリンとの離婚を成立させたというのは、これまでお話ししたとおりです。
「近親相姦」によって生まれたメアリーは、父ヘンリー8世に母キャサリンを離婚させた張本人を、次の妻アン・ブーリンだとして彼女を憎みました。そして「坊主憎けりゃ袈裟(けさ)まで憎い」の言葉通り、アンの子であるエリザベスをも憎んだのです。その恨みは強烈で、メアリーがメアリー1世として王座に就くとエリザベスを処刑すべくロンドン塔に幽閉し、その機会をうかがいました。
イングランド王室と『ハムレット』の共通点
ガートルードはハムレット王の弟クローディアスと結婚しました。彼らの間に子どもはまだ生まれていないので「メアリー」は存在しませんが、ハムレットの立場はエリザベスと同様、とても危ない立場に立たされていたのです。
本来ハムレット王が死去した後は、実子であるハムレットが次の王になるはずでしたが、クローディアスの登場でいったんご破算となりました。といって彼の次にハムレットが王になれるとはかぎりません。権力を握ったクローディアスは、理由をつけてハムレットの王位継承権を剥奪することができます。もしもガートルードとの間に子どもができれば、ハムレットを排除して自分の子を王位につけることを考えたのではないでしょうか。
エリザベスの立場はどうでしょう。彼女の母アン・ブーリンは、ヘンリー8世によって不義密通の濡れ衣を着せられて処刑されました。罪人の子に王位継承権など与えられるでしょうか?
そうです。エリザベスは私生児におとしめられ、当然のごとく権利は剥奪されました。これをみると女王はハムレットの立場にそっくりのように、私には思えてきます。
エリザベスの名誉を回復させ権利を復活させたのは、ヘンリーの最後の妻キャサリン・パーでした(第11話参照)。良妻賢母型のキャサリンは、ヘンリーの一粒種の男児エドワードとともにエリザベスも教育の場に同席させました。そのおかげでエリザベスは才能を開花させ、幅広い教養と多くの外国語を駆使できる言語能力を獲得できたのです。
狂気が真実を目覚めさせる
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愚者(Fool) |
宮廷での女性の立場とくに王族の女性の立場は、一面、とても弱いものだったように思います。たとえば結婚は恋愛によって成立するものではなく政略によってなされるものであり、王女と他国の王子との結婚はすなわち両国の同盟を意味しました。女性は国家権力の道具のようですね。
エリザベス女王が一生独身を通したのは、こういう常識を嫌って他国の王子との結婚を拒否したということもあったのではないでしょうか。これはいいかえれば、自らの「女性」を否定して男性もしくは男性に準ずる者であろうとする意思の表れであったように思います。
当時の弱小国イングランドにあって、女王は大国スペインやフランスと堂々と渡り合うためには常に権勢を誇示しなければなりません。彼女自身も莫大な国費を使って美と力を維持し続けなければならなかったのです。
しかしその一方で、対極にある無垢な少女のような心は押し込められ息を潜めて縮こまり、いつしか解放されるのを夢見ていたのではないか、と思うのです。
しかし女王にとってそれは、この世を去るか、気がふれるか、ということによってしか叶えられない願望です。押しつぶされたオフィーリアの思い
『ハムレット』においてのオフィーリアは、まるで人形のような存在です。ある批評家は「オフィーリア(Ophelia)」の「O(オー)」は「0(ゼロ)」を意味する、つまり何もない、自分がないということではないかと言っています。
オフィーリアにも自分なりのほんとうの心はあるでしょう。しかし、そのか弱い心は押しつぶされ小さくなって、胸の奥底に沈められていました。
第一幕第三場で、レアティーズがフランスに出発する直前にオフィーリアに結婚についてのアドヴァイスをします。
すなわち、ハムレットは王子なのだから彼の結婚は下々の者のようにはいかない。彼の結婚には国家の安泰と存亡がかかっているのだから、彼の愛が本物だったとしてもほどほどにしなさい、というのです。
それに対してオフィーリアは、「その立派な教えをこの胸の見張りに立てておきましょう」と言って一見従順な態度をとりますが、あなたこそその教えを破らないでね、とやり返すだけの強さはあります。
しかしその後に父ポローニアスがオフィーリアにたれた説教には、オフィーリアは抵抗することができません。
ハムレットの愛の告白を、ポローニアスは下らない手管としかとらえませんでした。そこで、そのようなハムレットとの恋愛は許さんとオフィーリアに命令します。そんな父の意思に対してオフィーリアは、「はい、お言葉どおりに」と言って自分の気持ちを飲み込んでしまうのです。
原文の英語を読んで驚いたのですが、オフィーリアのセリフの「お父様」という言葉は、英文では「My lord」になっています。父親は神のような存在だったのでしょうか。
人形から人間へ
やがてオフィーリアの押しつぶされた思いが、殻を破って出てくる瞬間がきます。
きっかけは父ポローニアスの死でした。ハムレットが母ガートルードに対して彼女の「不倫」をなじっているとき、激高のあまりクローディアスと間違えてポローニアスを刺し殺したのです。
愛するハムレットが父を殺してしまったという悲劇に打ちのめされ、オフィーリアは気がふれてしまいました。その時、心の底に沈んでいた自分の「ほんとう」が浮上します。
哀れにもオフィーリアは狂気のため乱れきった姿のまま現れ、どうしたのかときく人をさえぎって歌を歌い、自分の思いを語ります。他人のいうことをさえぎってまで我を通すことなどなかった彼女が、です。
そして、立ち会う人々に花を配ります。それぞれの花には<花言葉>が隠されており、渡した相手に対して彼女自身が思っていたことを伝えようとしているかのようです。ただし、脚本には誰に渡したかは書かれていません。研究者の間では相手が誰なのかについて議論が分かれるところです。あなたは誰に渡したと思いますか。
- ローズマリー=花言葉は<記憶>
- 三色すみれ(パンジー)==花言葉は<思い>
- ういきょう=花言葉は<おべっか、欺瞞>
- ヘンルーダ=花言葉は<後悔、悲しみ>
- ひな菊=花言葉は<恋の花、欺瞞の花>
- スミレ=花言葉は<忠実>。ただし、これは父が死んだ時にみんな枯れたと言っています。
狂うことによってようやく自分のほんとうの心を言うことができたオフィーリアは、満たされて川に落ち、流されていきました。
このエピソードは、正気である限り宮廷では真実を語ることができない、ということを暗示しているように思えます。そういえばハムレットも狂気をよそおうことによって真実を探り、悩み、母に対してもオフィーリアに対しても心の叫びをぶつけることができたのでしたね。
愚者(Fool)
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愚者はだんだら模様の服を 着、気味の悪い杖を持つ |
中世ではローマ教会を絶対とし、神に逆らう者は異端のらく印を押されて破門されるか、ひどい場合には火刑に処されてしまうかもしれないという抑圧の空気が支配的だったのです。ルネッサンスにはその抑圧からの解放という面もありました。
たとえば人文主義の台頭です。有名なところではエラスムス(1469頃-1536)という人文主義者がいました。
彼の著した書物のなかで代表的なものに『痴愚神礼讃』があります。これは痴愚の女神モリアーが、聖書伝説やギリシア・ローマの古典からの引用や警句とともに、人間の愚行を風刺し王侯貴族や聖職者、神学者などの権威者を、軽妙な語り口でこき下ろした風刺文学作品でした。
同じく人文主義者サケティー(1332頃-1400頃)はその著『三百話』で、ある種、神への不敬にあたるようなコント話を書いています。
たとえばそのなかにこんな話があります。教会の宗教画を見ていた一行のひとりが「ヨゼフ様は、なぜいつも陰気な顔をしているのか?」とつぶやくと、一緒にいた天才画家ジォットーが「自分のいいなづけが妊娠したというのに、その父親がわからないからだ」と答えたとのこと。
中世であれば、天罰が降るに違いないと畏れるような話が、この時代の民衆には大喝采をもって歓迎されたというのですから、ずいぶん解放的になったものです。
この空気は宮廷においても例外ではありません。
その頃、宮廷には宮廷道化師(コート・ジェスター)と呼ばれる愚者(フール)が雇われていました。彼は相手が国王であろうと構わず、どんな不敬なことを言っても許される存在でした。もちろん普通の臣下が同じことを言ったら、すぐに処刑されるでしょうけれど。
エリザベス女王の父ヘンリー8世にも宮廷道化師がいました。たとえばヘンリーが激怒して会議が空中分解しそうになったときに、愚者が言いたい放題を言って国王をはじめとする家臣を笑わせ、議事を続行させたという逸話が残っているそうです。
愚者の役割は、たとえ相手が偉い人や真面目な人であっても「俺とおんなじ愚か者さ」と知らしめること、言い換えれば「自分自身を知れ」と警告することでした。
愚者は天下御免の阿呆であるが故に、鋭い非難も相手は鷹揚(おうよう)に受け止め、大笑いした後に真摯に自分を見つめなおすことができたのです。
逆に言えば、正気である限り自分の気持ちを正直に表現することは、宮廷ではタブーだったのではないでしょうか。
女王の苦悩と『ハムレット』
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エリザベス1世 |
女王は、オフィーリアほどには弱くはなかったかも知れません。でも、自由にものが言える立場だったでしょうか。
不自由な立場
一生独身を貫き、女王の海賊(フランシス・ドレイクなど)を影で指揮して(第14話参照)、スペインを弱体化させて同国の誇りの無敵艦隊を破り、ヨーロッパ中に諜報員(スパイ)を放って各国の情報を集め、イングランド国民に対しては莫大なお金を使って権勢を誇示しました。国民にとってのエリザベス女王は美と力を体現する存在だったのです。
しかしそれでも、彼女は独裁者ではありませんでした。常に議会を重んじ議会の意見をよく聞いて行動しました。それは彼女の賢明な判断によるものが主だったと思いますが、女性という立場の弱さも意識していたのではないでしょうか。
先ほどお話しした第一幕第三場では、オフィーリアは兄のレアティーズに、ハムレットは王子なのだから彼の結婚は国の運命がかかっている。下々のように自由な恋愛は許されないのだとアドヴァイスされたことが書かれています。
エリザベスは女王という立場にありますから、ハムレットと同じような境遇だったことは容易に想像できるでしょう。
そして女王の権力に就くまでに姉のメアリーにはうとまれ、ロンドン塔に幽閉され、もう少しで処刑されるところまで追い詰められました。
また、スコットランド女王メアリー・ステュアートとはいとこ同士でありながら(注3)、メアリーの息子のジェイムズに会って抱いてやることもできず、権力闘争の結果メアリーを処刑せざるを得ないという悲劇に見舞われました。
こんなことを考えると、エリザベスにとって女王の座というものは嫌悪すべきものであり、自分の運命を呪ったのではないか。私にはそう思えます。
イングランド王室のポローニアス
また一説によりますと、『ハムレット』に登場するポローニアスの口調は、女王秘書長官ウィリアム・セシルの口調にそっくりだったといいます(注4)。
ポローニアスの口調とはどのようなものかというと、説教がましくダジャレが大好き、話の内容は俗っぽいという感じです。
たとえば、先ほどお話しした第一幕第三場のシーンでは、オフィーリアに対してポローニアスは、ハムレットの求愛をまともに受け取るでないと説教します。
その内容は、「自分を赤ん坊だと考えろ」と言って彼女を何もわかっていない箱入り娘だと決めつけ、「自分を高値で賭けろ」と言って愛情の有無ではなく損得勘定で動けと教えます。
日本語ではわかりにくいですが、オフィーリアのセリフにあるハムレットからの「愛の表現」を「入札」の意味にかけ、シャレだといって悦に入ったりするのも彼の特徴です。そして、自分の若い頃の女遊びをひけらかし、男なんてこんなものさと諭します。
もしセシルがポローニアスの口調にそっくりだったとしたら、このシーンなどは、女王は美しい唇の口角を少し上げて、微笑んだかも知れません。
弱き者、汝の名は
しかし考えてみれば、女王がもしも男だったら、そのような目には決して合わなかったのではなかったかと思います。
たとえ国王というヒエラルキーの頂上にいたとしても、女性というだけで「自分を赤ん坊だと思いなさい」と諭され、男たちの指図に従わなければならないとしたら、女王の心の底には抑圧された思いがあったのではないかと想像するのです。
変な話かもしれませんが、オフィーリアにとって父親は神であり愛おしい存在でしたが、彼女の「無意識」は自分を抑圧する者としてポローニアスをみていたのかもしれないと思います。ということは、ポローニアスが死ぬことで彼女の心の呪縛が解けたのではないか。そんなふうに思いました。
臨床心理学者カール・グスタフ・ユングが言うように、抑圧された暗い心を解放し表に見せている明るい心と統合するには心理的に「父親殺し」をする必要があります。実際に抑圧者を殺しては犯罪になってしまいますが、心理的に殺すことによってバラバラだった心を統合していくことが可能になります。
そんなところから、ポローニアス(=セシル)がお芝居の中で殺されたの観た女王は、やがてくる死の前に(注5)一種の安寧に辿り着いたかもしれない、と想像してみたりします。
また、女王という強い抑圧の中に押し込められた立場の人間が言いたいことを言うためには、「狂った頭」が言っているのだとするのが唯一の方策。女王が狂うわけにはいかないが、お芝居のなかの出来事ならカタルシスを得ることができます。
狂ったハムレットや狂ったオフィーリアが女王の悲しみを代弁し、登場人物全てを抹殺して抑圧された女王の心を解放する物語、それが『ハムレット』という物語だったのではないだろうか。今話ではそんな仮説をたてて考えてみました。
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(注1)次の王を指名
日本人的感覚からすると、国王が崩御した場合に次の王になるのはその長男、息子がいなければ王族の中で有力な家系の男子がなる、というのが普通だと思います。ところが、ヨーロッパではそうではない伝統が長く続きました。なんと選挙によって選ばれていたのです。
ヨーロッパの中世は、375年から始まったゲルマン民族の大移動から始まり、ルネッサンスがヨーロッパ全体に伝播する15世紀頃まで続いたとされています。
ゲルマン民族といってもひとつではなく、西ゴート族、ヴァンダル族、フランク族、アングル族、サクソン族など多くの部族に分かれていました。ゲルマン民族は離合集散を繰り返していきやがて王国を築きますが、そのような状態のなかで王の直系の子孫が王位を継ぐなどということはできません。そこで王は有力者による選挙(あるいは指名)で選ばれていたのです。
時代が降るにしたがって、その選挙は廃れていき王の直系の子孫が継ぐというスタイルが定着していきましたが、選挙あるいは指名によって決定されるという伝統も受け継がれました。
『ハムレット』の最後の場面では、ハムレットの王家が絶滅する時にハムレットがフォーティンブラスを次の王に指名するという場面がありますが、それができた理由はここにあったわけです。
(注2)ヘンリー8世の離婚は認められない
ヘンリー8世の父ヘンリー7世は地位を盤石にするために大国スペインのキャサリンを長男アーサーの嫁として迎えました。
しかし、アーサーが結婚5か月で死去したため、そのままキャサリンをスペインに返さなければならなくなったのです。しかしそれを惜しんだヘンリー7世は、ローマ教会の反対を押し切って、当時11歳だった次男ヘンリーが成人する時に結婚させるとしてイングランドに留め置きました。
ヘンリー8世は、キャサリンと離婚を成立させるためにこのことを持ち出して無効だと訴えます。しかしこの時、ローマ教会は離婚を認めませんでした。
これは当時勃発した宗教改革の影響があります。この影響で教皇とスペイン王カール5世の確執が深まり、カールがローマを占領するという事件(1527年)が起こりました。
ローマを支配下に置いたカールはキャサリンの甥にあたり、彼女がヘンリーとの離婚を望んでいないことを知っていたのでヘンリーの訴えを退けたのです。
(注3)エリザベス女王とメアリー・ステュアートはいとこ同士
エリザベスの祖父ヘンリー7世は、宿敵スコットランドとの融和を図って長女マーガレットをスコットランド王家のジェームズ4世に嫁がせました。メアリー・ステュアートは、マーガレットの孫にあたります。
(注4)ポローニアスの口調は女王秘書長官ウィリアム・セシルに似ている
ポローニアスの口調が宮廷の重臣のひとりに似ているという説は、確かに私が読んだ本に書かれていたのですが、それがウィリアム・セシルであったという確証がとれません。どの本に書かれていたのかが分からないのです。それでこの人ではないかもしれません。どなたかご存じの方は教えていただけると助かります。
(注5)やがて来る死の前に
『ハムレット』の初演は1600年頃といわれています。エリザベス女王が崩御するのが1603年ですから、女王ご自身がとても弱っておられたのではないかと推察します。
●参考にした図書
『新訳 ハムレット』ウィリアム・シェイクスピア・著 河合祥一郎 角川文庫
『シェイクスピア』河合祥一郎・著 中公新書
『イギリスの歴史』君塚直隆・著 河出書房新社
ブリタニアの創成(太古〜古代)から現在のブレグジットの道まで、全12章構成の、斯界の第一人者によるイギリス通史入門編。イギリスの成り立ちから大英帝国、EU脱退まですべて解明。
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